「ぶっはははははは!」

 彼女の笑い声を筆頭に、周囲では忍び笑いが溢れかえる。

しかし耐え切れずつられるように、園長まで笑っているのだ。


「きゃーっ、おじさんオカシイー!」

「ヘンだよおー」

 リハーサルを行う多目的室を野次馬しにきた子供たちまでからかう始末だ。


「そ、そんなにオカシイのかな……?」

 自分では悪くないと思ったんだけど。


「ロ、ロミオが王子ぃーっ!?」

 まさに抱腹絶倒という言葉を当てはめたように転げ笑う彼女。


 そ、そうか、ロミオは別に王子でもなんでもない!

そして現代版ロミオとジュリエットをやるわけだし……


「まあね、さすがのアタシでもかばいきれないわ」

 目じりにためた涙を拭う秋さんに、隣のオトメくんもうんうんと頷くばかり。


「ま、まあ、あまり気にしないほうがいいよ?意外と……うん、似合ってるし」

 よくも悪くも、萌のフォローはトドメを刺す。


「馬っ鹿じゃなーい」

 にぎやかな多目的室に一際通る声は、あの生意気少女・都だ。

そして都の登場により、子供たちは一斉に講堂へ侵入し、辺りはすぐに遊び場と化した。


「ちょっと、みんなー!今日は入っちゃダメって言ったでしょーっ」

 萌を含め、職員の人たちも子供たちの対応に追われる。


「そんな子供ダマシにのるわけないでショ!」

「その子供ダマシにのってあげるのも“オトナ”よ」

 二王立ちする都に彼女はすかさずふふんと鼻を鳴らすし、バチバチと火花を散らす姿は、オレには理解しがたい光景。

それよりも、演劇用に設置した腰くらいまである舞台に、子供たちが乗り上げてきてるほうが気が気じゃない。