特有のひりひりとした痛みと変な緊張感で眠れず、夜が明けたら顔がすごいむくんでいた。

ようやく外が明るくなってきた頃だというのに、扉を開くと秋さんが肩にタオルをかけていた。


「おはよう…っ、ぶふ、葵ちゃんってばひどい顔よ?」


 目が合った瞬間ぶっと吹いた秋さん。

笑っている時点で心配してるようには見えない。


「またお風呂ですか、ヨカッタデスネ」

 感情をこめられないオレに対して、秋さんは気にせず楽しそうに微笑む。


「ほら、あたしってば大浴場に行きたくてもいけないじゃない?
予約制だけど、個室の岩風呂なら入れるしね」

 何度入ってもきもちいいわ、と思い出してニコニコしている。

そういえば、昨夜も大浴場へ行くときは一人でどこかに行ってしまっていた。

ぱったり姿を消してしまったから、あまり気には留めていなかった。


 こんな秋さんにも、一応常識とかあったんだなぁ。

なんて感心してしまったときだ。


「葵ちゃんもたいへんねぇ、イロイロと」

 楽しそうにツンツンと、オレがたった今出てきた部屋を指差す。

そもそもこんな事態になった原因の一人でもあるというのに…。


 呆れを通り越して、いっそ尊敬してしまいそうだ。


「ま、嫌われてはいないんだから、よかったじゃない」

 秋さんの言葉に耳を疑う。


「はい?…どうみても、アイツは目の敵にしてるだろう?」

 パシリにされ、ハリセンで叩かれて、しまいにはヘンタイ扱い。

思い出すだけで泣けてくる……。


 そんなオレの気持ちを察したのか、はあ、とため息をついた秋さんは、ジト目で腰に手を当てていた。


「葵ちゃん、それでも恋愛屋?」