夏の虫がリリリと騒ぎたて、日も落ちてぐっと冷たくなった風が頬を切る。
二人分の下駄でカラカラとかき鳴らす音が、一際目立っていた。
仲居さんに教えてもらったとおり、別れ道を脇に入ると遠くで白い洋館が見える。
写真に映っていた建物と瓜二つ…いや、同じなんだろう。
それが近づいてきた頃。
「瑠璃さん!」
遠くで聞こえた、覚えのある声。
更にスピードを上げた彼女に追いつけなかった自分が情けない。
アルコールが体内に入っているとはいえ、鍛えなおそうかと落ち込む寸前だった。
先に彼女が駆け寄ったそこには、少女を抱えたオトメくん。
ぐったりとうなだれるように倒れこんだ少女をみて、穏やかな雰囲気ではないことは確かだった。
慌てて近づくと、一心不乱にオトメくんが少女の身体を揺らしている。
「瑠璃さん、瑠璃さんっ!」
オレたちが来たことすら理解していないのか、少女だけを見つめている。
「オトメくん、一体どうしたの!?」
挟み込むように向かい側に回った彼女が、少女の顔を覗き込み手首を掴んだりして状態を探っていた。
その手際に見とれかけたが、オレもできることをしなくては。
少し…いや、かなり怖いけど。
「あそこで電話借り……」
勇気を振り絞って、一歩を踏み出して振り返ったときだ。
彼女がオトメくんの胸倉を片手で掴みあげると、右手を大きく振りかぶる。
痛みを感じないはずなのに、次の動作が刻み込まれたように身体がピクリとこわばった。
二人分の下駄でカラカラとかき鳴らす音が、一際目立っていた。
仲居さんに教えてもらったとおり、別れ道を脇に入ると遠くで白い洋館が見える。
写真に映っていた建物と瓜二つ…いや、同じなんだろう。
それが近づいてきた頃。
「瑠璃さん!」
遠くで聞こえた、覚えのある声。
更にスピードを上げた彼女に追いつけなかった自分が情けない。
アルコールが体内に入っているとはいえ、鍛えなおそうかと落ち込む寸前だった。
先に彼女が駆け寄ったそこには、少女を抱えたオトメくん。
ぐったりとうなだれるように倒れこんだ少女をみて、穏やかな雰囲気ではないことは確かだった。
慌てて近づくと、一心不乱にオトメくんが少女の身体を揺らしている。
「瑠璃さん、瑠璃さんっ!」
オレたちが来たことすら理解していないのか、少女だけを見つめている。
「オトメくん、一体どうしたの!?」
挟み込むように向かい側に回った彼女が、少女の顔を覗き込み手首を掴んだりして状態を探っていた。
その手際に見とれかけたが、オレもできることをしなくては。
少し…いや、かなり怖いけど。
「あそこで電話借り……」
勇気を振り絞って、一歩を踏み出して振り返ったときだ。
彼女がオトメくんの胸倉を片手で掴みあげると、右手を大きく振りかぶる。
痛みを感じないはずなのに、次の動作が刻み込まれたように身体がピクリとこわばった。