映し出されているのは、一面が白銀で覆い尽くす。

雪原にも似た深い雪に埋もれるように佇む、真っ白の洋館。

かすかに顔を出すように剥き出しの大木の幹が見えたので、積もっている雪の深さからもどこか冬の寒い山奥なのだろう。

「これは……」

 わけもわからず、じっと見つめていたオレたちの後ろでぽつりとつぶやいたのは、オトメくんだった。

 覗き込むようにゆっくり振り向くと、明らかに様子がおかしかった。

景色の記憶を手繰り寄せているのだろうか。

「心当たりでも?」

「あ、いえ……」

 オレの問いに歯切れ悪く答えたオトメくんは、そのままうつむいてしまう。

さらに問い詰めようとしたが、遮るように入り口で呼び出しがかかった。


「お客様、夕ご飯の準備が整いましたよ」

 一礼してさっさと姿を消した仲居さん。

卓球を楽しんでいた周りの客も、ぞろぞろ卓球場を後にする。


 ここで気づいたんだけど、どうやら男性は白地で女性は藍色の浴衣らしい。

年配のオジさんも小さな子供も、一貫してオトコは白地。


 ……―のはずなのに。


「んじゃ、食べますか!」

 意気揚々とした秋さんが、ごく自然に藍色の浴衣を着ていた。

納得しかけたが、その根性に思わずオレは笑ってしまった。



 一行がたどり着いた宴会場は、人と活気で賑わっている。

すでに満席状態で、盛りだくさんの山の幸と熱い酒の匂いに誘われて、腹の虫は素直に反応した。

「ぷっ」

 恥ずかしながらも、さっきまで考え込んでいたオトメくんがクスリと笑った。

「く、食うぞ!」

 耳まで赤い気がするのは、気のせいにしておこう。