ちょうどあたりは、青から橙に変わる頃で、背の高い木々が幻想的にすら見えていた。
空気もすこしひんやりとして、真夏のはずなのに涼しいとさえ感じた、そのとき。
「……あ、あのっ」
道の向こうで、聞き覚えのある震えた声がした。
オレたちはなるべく足音を立てないように、草むらに入ってそちらに近づく。
「あら、昼間にお会いした方ですね」
そこには、駅に着いたときに現れた白い日傘を差した少女がいたのだ。
夕日に照らされて、その頬がほんのり紅く見える。
「ぼ、ぼぼぼ、僕……!」
どもるオトメくんに、ようやくオレは気づく。
彼のキモチを見抜けなかったことに内心ショックを受けたが、すぐさまガンバレ!と祈っていた。
なかなか話し出さないその様子に、おそらく一緒に見守っている秋さんもじれったいと思っていたのだろう。
浴衣がギュギュッと後ろに引っ張られて、少しずつはだけていく。
そんな中、小さな笑い声が零れる。
「慌てないでくださいね?」
少女はゆっくりとした足取りでオトメくんに近づく。
日傘をパサリと閉じて、腰まで伸びた長い髪が陽差しで透き通る。
「私は、あなたをずっと探してた…」
……え?
少女の言葉に思わず声が出そうになるが、慌てて秋さんに口をふさがれた。
そして、また季節はずれの冷たい風が吹き抜けた。
少女はオトメくんの手を両手でやさしく包み込むように握り、ゆっくりと慈しむように指先に軽く唇をあてた。
まるで、童話の姫を迎えに来た王子のように。
「ずっと、お待ちもうしておりました……」
夕日に浮かび上がる二人のシルエットは、多分、一生忘れることはないだろう。
見上げるように優しく微笑んだ少女は、オトメくんに向かってこういった。
「龍さま」
空気もすこしひんやりとして、真夏のはずなのに涼しいとさえ感じた、そのとき。
「……あ、あのっ」
道の向こうで、聞き覚えのある震えた声がした。
オレたちはなるべく足音を立てないように、草むらに入ってそちらに近づく。
「あら、昼間にお会いした方ですね」
そこには、駅に着いたときに現れた白い日傘を差した少女がいたのだ。
夕日に照らされて、その頬がほんのり紅く見える。
「ぼ、ぼぼぼ、僕……!」
どもるオトメくんに、ようやくオレは気づく。
彼のキモチを見抜けなかったことに内心ショックを受けたが、すぐさまガンバレ!と祈っていた。
なかなか話し出さないその様子に、おそらく一緒に見守っている秋さんもじれったいと思っていたのだろう。
浴衣がギュギュッと後ろに引っ張られて、少しずつはだけていく。
そんな中、小さな笑い声が零れる。
「慌てないでくださいね?」
少女はゆっくりとした足取りでオトメくんに近づく。
日傘をパサリと閉じて、腰まで伸びた長い髪が陽差しで透き通る。
「私は、あなたをずっと探してた…」
……え?
少女の言葉に思わず声が出そうになるが、慌てて秋さんに口をふさがれた。
そして、また季節はずれの冷たい風が吹き抜けた。
少女はオトメくんの手を両手でやさしく包み込むように握り、ゆっくりと慈しむように指先に軽く唇をあてた。
まるで、童話の姫を迎えに来た王子のように。
「ずっと、お待ちもうしておりました……」
夕日に浮かび上がる二人のシルエットは、多分、一生忘れることはないだろう。
見上げるように優しく微笑んだ少女は、オトメくんに向かってこういった。
「龍さま」

