「私じゃないのに、毎日毎日……っ!」

「オレは分かってるよ!」


 大粒の涙がピンクに染まった頬を伝っていた。

そっと拭ってやるしか、できなかった。


「私と一緒にいたら……葵まで、言われるんだ…」


 そんな辛そうな萌を見たくなくて、納得したふりをした。


 ひっそり貯めた結婚資金。

 どうしようもなくて、けれど手元に残しておきたくない一心で、この『恋愛屋』を立ち上げた。

幸い、人脈だけは人並みにあったオレは、いろんなツテを広げていった。


どこかで萌を探していた。

もう一度会えたら運命だって、信じたかったのかもしれない。





「あれから、六年か……」



 だけど、この再会にはあまりにも時間がかかりすぎている。

あの頃と同じ想いは、オレの中に留まっているのだろうか……?



 どんどん藍色に飲み込まれていく夜景は、オレを惑わすのに十分だった。


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