理想恋愛屋

 ジリジリと間合いも変わらず、時間だけが過ぎる中、ピンクを捕らえている男の後ろで何かが動いた。


 …アレって、もしかして……。

 なんだか信じられない光景に呆れつつも、ちょっとホッとしてたりする自分がいるから情けない。

 ササッとその人影が男の目の前に飛び出る。
すると、カシャン、カシャン、カシャン、と激しいフラッシュの連続で男がよろけていた。

「うわっ」

「今です、ブルー!」

 そういってカメラのシャッターを切るのは、オレたち同様、緑色の全身タイツに身を包んだオトメくん。

「わかったっ、オト…いや、グリーン!」


 オレは走り出して男に飛び掛る。


 ……それにしても、だ。
オレには必殺技がないのか…?


 ヘンな嫉妬が生まれるのも感じながら、とにかくピンクの奪還を試みる。

「でやぁぁあ!」

 と、叫びながら地を蹴ったはいいが。
男はのけぞって彼女の手を離したものの、なんとか踏みとどまっているのだ。

「くっそ~!」

 そういいながら男が振りかぶってきた。
…情けないことに、投げつけてきた木の枝がオレの額に見事クリーンヒット。


 う、うそだろう…!?