プリプリしたオレを遠めに見ながら、ソファに座っている彼女と兄、それに萌のもとへと彼は近寄る。

「オトメくん、こんにちは~」

 そう明るく出迎えたのは、彼女。

いつの間にか親しくなってるので、更に腹が立ってくる。

「あ、コレどうぞ~」

 そういって彼はどっさりとビニール袋を彼女に手渡す。

なんとなく気になってパソコンに向かいながら、覗くようにチラリと見ていた。

「わぁ、どっかの誰かさんと違って、オトメくんってば気が利くわね~」

 皮肉っぽく“誰かさん”と強調しながら歓喜の叫びを上げた彼女は、がさがさと中身を出していた。

しかし、そんなことをいちいち気にしていては身が持たない。


その音になんとなく引きずられるように、椅子から立ち上がりソファの背もたれに手をついて覗き込む。


「アロハ家・期間限定のチョコミントモンブランアイスだあ!」

 そう叫ぶと、すでに彼女の領土と化している冷凍庫にアイスカップを詰め込む。

 ネーミング通りのその味を想像すると、かなり微妙に思えるんだが……。

嬉しそうな彼女からは、そんな考えもひっくり返ってしまいそうだ。


「僕の着メロで気づいてくれたのは、遥姫さんだけですからね!」

 そういって、彼は胸ポケットからチラリと携帯を見せてきた。


 オレはそこでようやく気づく。

度々かかってきた着信音はどこかで聞いたことあると思っていた。

それは、この事務所付近に現れるアイス屋台・アロハ家から聞こえるものだったのだ。

「あったりまえじゃない!」

 誇らしげに笑ってみせる彼女だが、オレにはその『当たり前』の意味は分からない。

「……ところで!一体、なんの用なんです!?」

 腕組みをしながら、ジロリと彼女の座るソファの背もたれに腰掛ける。

「ああ、そうだった!コレ、どうぞ」

 そういって彼はオレに茶封筒を一つ手渡してきたので、黙って受け取り、中身を流すようにオレのデスクに広げる。


 バサバサと現れてきたのは……