カチカチカチ……。

パソコンと睨めっこのオレは、相も変わらず毎日仕事。


「ひっ、ひぁっ……」

 背を向けてソファに座る彼女。


「は、遥姫…ぷくく、笑いすぎだよ…?くく」

 そんな彼女の反対側に、愛しき婚約者の萌を隣に置く兄。

 クチに手を当てて必死に隠そうとする二人の姿は、確実にオレをバカにしている。

「遥姫ちゃん、匠さん……」

 そんな二人を困ったように見守る萌。


 ここ1週間、この忍び笑いに無性に腹が立っている。
 

「ああっ、もうっ!!うるさいなあっ!」

 目の前のソファに座る人だかりに、デスクにあったメモ用紙を丸めて投げつける。

「いったいわねー!何すんのよ!!」

 ちょうど運悪く彼女の頭に当たったもんだから、かわいいクセ毛を揺らしながら立ち上がって睨みつけてきた。

 だが、今日は絶対負けやしない!


「うっさいんだよ!……お前は、特に!!」

 バチバチと火花を散らしそうなオレたちの間を遮るように、事務所のドアが開いた。

「こんにちは~」

 心なしか嬉しそうにやってきたのは、この笑い声の原因でもある──

「……早乙女サンっ!!」


 徐々に思い出すあのショーの日。

オレがショーのために、恥をさらしてまで立った舞台。


 彼女を助けたい──なんて、二度と思うもんか!