一瞬聞き間違いだ、と天の声がきこえた気がした。
そうだ。そうに違いない。
大学内に私をめーちゃんなどと、精々小学生がいいとこのかわいらしいちゃん付け呼びなんてする知り合い知人友人は存在しない。
そう、いるはずがない。
大学生ともなれば、精々苗字にさんづけ、むしろ呼び捨てが主流だ。
そう、聞き間違いに違いない。


無理な論理展開で足を進めようとすれば、道をふさぐように人が立つ。


それが誰か、認識したくない脳が確かにあるのだけど――、



「めーちゃん、遅いよ」



目の前のかわいらしいスマイルをする少年が許してくれないようだ。


ていうか、なぜいるのだ光輝少年。



「めーちゃんどこいるかわからないから、ここで待ってたんですよ。めーちゃんお昼用意してなかったから、きっと食堂にくる、てあたりつけて」


言いながら距離を詰める光輝少年。


気が付けば目の前にいる。



「ちょっと、鳴っ。何、知り合い!?」


友人の言葉にはっとすれば、やっと現状を正確に把握する。


光輝少年は、ここで私を待っていたらしい。
そう、初対面の時と同じ学ラン姿で。

学ラン姿なんて、大学構内じゃ目立つ。だって私服だよ、大学生。
加えて光輝少年は美少年、というかカワイイ高校生。


周囲にいるこの女子学生たちの視線を、本当にどうしよう…。




とりあえず。




光輝少年をひっとらえる。



「ごめんっ、私この子に用事あるから、じゃっ」



そして、脱兎のごとくその場から逃げだした。



足は勝手に人通りの少ない、校舎裏の通路に向かった。