徒歩数分にして大学のキャンパスにたどり着く。


大学近辺に下宿するというのは、本当に好環境だ。

たとえ寝坊してしまっても、遅刻のリスクが少ない。…遅刻したことないけど。
たとえレポート課題が出されても、ぎりぎりまで粘れる。…基本的に前日には仕上がるけど。



それにしても。


講義棟に向けて足を動かしながら、考える。



なぜだろう。
大学にいるというのに、なんと心の晴れやかなことか。
特別勉学が好きなわけでもなく、とはいえ怠惰が好ましいというわけでもないのが常の私なわけだが、何故だか今は大学にいる方が気分がすっきりしている。
原因は明白だ。
あの二人だ。
予測不可能すぎるあの二人組の所為だ。
しかない、だっていくら考えても想定外すぎることの連続だ。
あんな人の常識の通じない生き物も、あまりない。
そう。大学は基本的に常識にあふれているのだ。
その常識に乗っ取って授業が進み、さらに高次のことを学ぶ場所が大学なのだ。
ああ、なんと心休まることか。
そうか、私が今求めるものは大学なのか。
大学こそ、私の心のオアシスなのかっ。


なんて逃避してしまうほど、どうやら私は疲弊しているらしい。


…心が。



棟内に入り、正面の階段をのぼる。



三階の右側三番目の扉。

部屋番号33講義室。


中に入ると、数人の生徒が席についている。



私は窓際前方の空席に荷物をおろし、一息ついた。