戸井田は予定の時刻まで少し時間があったので、千紗のバイト先の前にいた。

 店内には入らず、外からながめていた。

 戸井田は千紗を見ていると、心が和むのだ。

 ずっと見ていたい気がしたが、義母との約束の時間が迫っていた。行く予定ではなかったが、時間つぶしになると思った。

 待ち合わせの場所はここから歩いて、数分のところにあるのだ。

 時計がきっかりになって、戸井田はカフェのドアをくぐった。

 コーヒーの香りが充満している。カウンターの席は四席あって、客が一人いた。

 テーブルは二台あって、一席だけ占領されていた。

 義母だった。こっちを向いて手を上げた。

 戸井田は義母の目の前に座った。

「こんにちは……」

 と、言って義母は座って会釈した。

 戸井田はすぐにコーヒーを注文した。

「お父さんは?」

 義母が気になるところだ。

「まだ、きてませんね」