一生懸命 本音のヒトツヒトツを投げかける戸上は肩を震わせている。 男の人が泣いている姿を見たのは初めてだった。
戸上:『…本当は、今日ここに来たら、お前が帰って来てくれるんじゃないかって思ったんだ…』
声を震わせながら、ゆっくりと告げた。
戸上:『…もう一度、戻って来てくれないか…?』
戸上の言葉が胸に染みた。そんな風に言われるなんて 思いもしなかった。抑えられない涙が零れ落ちていく。
佐倉:『…私、大ちゃんの事 本当に解ってなかったんだなぁって あの絵を見て思ったんだ。』
戸上:『…え…?』
佐倉:『それまでは、色んな事ですれ違うのが辛くて…もうイヤって思ってたけど…』
戸上:『うん…』
佐倉:『でも…あんなに一緒にいたのに、あの絵に全然気が付かなかった。それって…大ちゃんの気持ちにも気付けなかったって事だもん。今の私じゃ…ダメなんだって思ったの』
戸上:『…どうしてもダメなのか?』
佐倉:『…うん』
戸上:『まだ間に合うんだぜ?』
佐倉:『…大ちゃんに そう思って貰えた事が…凄く嬉しいよ(笑)…今まで、本当にありがとね…』
車の中で 声を上げて泣いた。端から見たら、馬鹿げた二人に見えるかもしれない。