涙が枯れるなんて、人は上手い事を言ったもんだ。今日一日で 一生分 泣いた様な気がしていた。ゆっくりと部屋が闇にのまれていく。窓の外は 静かな雨が降っていた。
時計の針が 深夜11時を過ぎた頃、ベッドに横たわった耳元で 携帯が鳴った。
佐倉:『…はい…』
泣いたせいで声は掠れ、鼻にかかった様になってしまった。
戸上:『よぉ…』
佐倉:『…大ちゃん?』
戸上:『もうすぐで そっちに着くから』
佐倉:『…?』
戸上の言葉を理解出来ないでいた。
戸上:『もうすぐお前んちの近くの駅に着くんだ。早く迎えに来いよ』
佐倉:『は?…どういう事?』
戸上:『いいから駅まで迎えに来い!解ったな!』
それだけで 電話は切れてしまった。訳が解らないまま 駅へと車を走らせると、ロータリーに佇む大介を見付けた。その姿は 街頭の光に照らされた雨の雫をじっと見詰めている様に空を見上げている。私はそんな大介の目の前に車を止めた。
戸上:『お前遅せぇんだよ!何分待たせんだ』
ブツブツ言いながら助手席に乗り込んだ。
佐倉:『そもそも、何でここに居るの?』
戸上:『こんな遠くから毎週来てたなんて、お前って ホントすげーな(笑)。しかもこんな所、俺初めてだわ(笑)』