それから毎週、土日になる度に大介の元へと通った。大介はアルバイトとアトリエに通い、夜になって家に帰って来るのを、掃除と洗濯・料理を済ませて出迎える。いわゆる『通い妻』だ。特にデートはしない。いつでも、家で絵を描く彼を見ていながら 一人でゴロゴロしている。ただ それだけの事が幸せだった。大介といられるだけで 笑顔が零れた。それなのに…
それから3ヶ月後。何もかもが当たり前のようになってきていた。
佐倉:『ねぇ…』
戸上:『…んぁ…?』

タバコに火を付け、ふてくされながら
佐倉:『出掛けてもいい?』
戸上:『…あぁ。』

いつもの事だが、正直聞いているのか よく解らない。近くの公園でタバコをふかしていると、バンドのメンバーから電話が鳴った。
佐倉:『はい…どった?』
杉崎:『あ、俺だけど、明後日に次のライブの予定立てたいから…いつもの喫茶店に集まれよ』
佐倉:『あぁ、了解…』
杉崎:『なんだよ 元気ねぇじゃん(笑)』
佐倉:『そんな事はないけど…。じゃぁ 』

簡単に話を済ませて電話を切った。メンバーには言えない。普段『女』ってキャラじゃないだけに、今の事は自分の中にしまい込む事にした。