薄暗い部屋で独り、疲れ果てた身体をソファーに埋めた。私はバンド活動をしている。どうしても『バンドでメジャーになりたい』という夢を叶える為、アルバイトとバンドに明け暮れる日々を送っていた。しかし、夢はまだまだ遠い。窓を叩く北風と小さな雨粒に 何故こんなにも『孤独』を感じるのだろう。
そんな時、虚ろな視線の先で 携帯電話が鳴った。色とりどりに光を放ち、私を呼んでいる。

佐倉:『…はい…』
いかにも憂鬱そうな声に 相手は少し間を空けて話し始めた。

戸上:『…えっ…あぁ、さっき電話貰ったみたいなんだけど』
聞き慣れない声に 顔をしかめた。
佐倉:『…え?…間違いじゃないですか?私 掛けてませんけど』
戸上:『いや、履歴があったから掛けたんだよね…。アンタ名前は?』
佐倉:『貴方こそ誰ですか?あっ…イタズラ?そういうのヤメて下さい!』
そう言って一方的に切った。相手の言葉が気になり、リダイアル履歴を見ると、知らない番号が確かに載っている。掛けた記憶は全くないのに…。すると直ぐに またその番号から着信を受けた。