病室の前に着く。 302 佐藤政宗 確かに、兄の名前が書いてある。 だが、兄になど会いたくなかった。 なぜ私が…。 兄の声はおろか、顔も思い出せない。 兄はどんな表情で どんな声で どんな喋り方をするのだろう。 そんなことを考え、 何年も会話をしていない兄に 少し緊張しながら ドアをノックした。