兄は敬語しか使わなかった。 だって、兄の中で私は 見ず知らずの人。 私だけじゃない。 友人達も、母も、医師だって。 皆、知らない人。 どうしたら、 思い出してくれるのだろう…? わからない。 あとは兄次第だった。 その日は珍しく、母が来た。 忙しい仕事をわざわざ休んで。 今日しか休みが取れなかったらしい。 母は、兄を見るなり 「政宗…!」 といって、抱きしめた。