病室に兄はいなかった。 それもそのはず。 治療中だからだ。 そこまで頭が回らないほど 慌てていたのだ。 あんなに嫌いだった兄が 今は心配でしょうがない。 受付で聞けばよかった。 息を切らしながら、後悔していると 遠くに看護師が見えた。 走り寄る。 「すみません! 佐藤政宗は…」 「佐藤さんのご家族の方ですか? 今は集中治療室にいますから、 受付の…」 「わっ、分かりました! ありがとうございます!!」 それだけ言い残して駆け出した。