死神の嘲笑

一人になった朱理の目に最初に留まったのは、或る人物だ。


二十歳前後ぐらいの、短髪の男だ。

サーカスで見る玉乗りのように、大きなビーチボールらしきものに乗ろう、と必死になっているのだ。

男の目は真剣そのもので、朱理は話し掛けることが憚られた。


ぐるっと辺りを見回す。


綱渡りに興じる者。

空中ブランコに挑戦する者。


死神はサーカスでも造りたいのだろうか。