「はい。三十年、です。今、私は二十九年と十一ヶ月、三週間をこの地で過ごしました」

「それでは、あと一週間で……」

「正解です、栗原さん。寿命が途絶えた死神は『無』の世界へと旅立ちます」

曇天のような、重い、重い沈黙が流れた。


「……続けてください」

静寂を破ったのは、朱理だった。

「ああ、すみません。『無』の世界へ向かうまでに、死神は新たにここの管理者となる死神への引継ぎなどで忙しくなるんです」

「新たな死神、ということは死神を育てる場所でもあるんですか?」

この声は、疑問の源泉と化した友弥のものだ。