部屋に戻って身支度をする。
身支度っていっても、何も支度することないけど…。
一通り部屋を片づけなおして出る。
甲板に出ると、まだ誰もいなかった。
「あれ?…みんなまだ来てないのかな。」
見渡しても誰もいない。
考え込んでいると、頭に衝撃が走った。
「いっつぅ…!」
反射的に後ろを振り向くと、いつも以上に目つきの悪い船長さん。
あはは、と笑ってごまかした私の両頬をまたもやひっぱってきた。
「ひたひれす、やめてくらはい!」
じたばたともがいて、手が離された瞬間後ずさる。
頬をさすりながら見上げると、ほいっと何か黒いものを投げられた。
「うぶっ!」
受け取って見てみると、それはまさしく私の鞄。
てっきり海の藻屑になったと思ったのに…。
「ありがとう!」
「別に…。それより、遅すぎる。早くいくぞ。」
すたすたと歩いて行ってしまった船長さん。
追いかけてみんなの居場所を聞くと、どうやら私が遅すぎて先に行ってしまったらしい。
早歩きで前を歩く船長さんに置いて行かれないよう、渡された鞄を抱きかかえ、駆け出した。
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