私はまだ船長さんに気持ちを伝えきれていない。それなのに、こっちの世界に戻ってきている。
もし崎坂さんの言う通りだったとしたら、この願いが叶ったとき、私が無くす居場所のことはこの世界での居場所……つまり家族だ。
家族を無くして、好きな人の所に行く。
崎坂さんの言っていた、酷、という意味が理解できた。
それに、船長さんのお願いと、最後のキス。
絵本の中の、惹かれ合う青年と少女の話。
色々なことが頭の中をぐるぐるする。
そして、出てきた答えは一つだった。
「もう1度船長さんに会いたい。会って、呪いから救ってあげたい。」
その言葉に崎坂さんは笑ってくれた。
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