「崎坂さんに言うのは可笑しいのかもしれませんが、私は船長さんが好きでした。だから、せめて一言思いを伝えてから帰るつもりでした。条件は私の居場所をなくすこと。なので、きっと今私の居場所はあの世界にはもうないはずです………。」
「つもりでした、ってことは、伝えられなかったのかい?」
「いえ………伝えたつもりなんですが……。」
肝心の2文字が言えなかった。
無意識に唇をそっと撫でる。
その行動を見て、崎坂さんは何かを察したようだった。
「もしかして、好きって言う前にこっちに戻ったきたりした?」
「………はい。」
「そっかそっか。」
納得したように頷いた崎坂さんは、にこりと笑っていった。
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