「もしおまえがこの先一人前になって、居場所が無くなるようなことがあれば、入れてやるよ。だから今は帰れ。」



アレンさんを呼び出すと、送るように伝える船長さん。
アレンさんと並んで去っていくエルちゃんを見て、私は船長さんに駆け寄った。



「ほんとに行かせちゃっていいんですか?」


エルちゃんは、船長さんにとって…青年にとっての少女。
必要不可欠な存在だ。

そんな存在をここで手放すなんてこと、してもいいのだろうか。



船長さんの目をまっすぐにみると、大きくため息をつかれた。



「ここにいる限り、危険なことがたくさんある。死ぬかもしれない。なのに、死んだときに俺らの他に悲しむやつがいるって分かっているやつを入れるか?悲しむのは俺らだけで充分だ。」

すこし悲しそうにする船長さんに、納得する。
そうだ。本の中だと、少女は永遠に青年に会うことが出来なくなるんだ。
でも、今は違う。会おうと思えば会える。



「分かったらさっさと朝飯手伝ってこい!」


「はいぃぃぃぃっ!!」




急いでコックさんの元へ走り出す。
なんだ、呪いだなんて、大げさだ。


胸が締め付けられるような痛みを堪え、私は言い聞かせた。
青年は、もう少女に救われた。






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