稽古を終えて歩いていると縁側に座っている蝶がいた。

ずっと遠くを見つめている瞳。

だけどその瞳のなかにある悲しみ。

どうしたら、いつもの君に戻ってくれるかな?

そんなことを考えながら僕は立ち止まる。

「そうだ。」

僕はそっと台所へ向かう。

そして目当てのものを掴み蝶のいる場所へと向かう。

戻ってくるとやはり同じようにそこの蝶は座っていた。

僕はそっと蝶の後ろに回り込む。

いつもなら気づくはずだけど、ぼーっとしているためか気づく気配はない。

そしてそっと蝶の両頬に持っているものを当てる。

「きゃっ!!!!」

驚いたのか素っ頓狂な声を上げる。

「ちーよ?驚いた?」

「お、沖田さん!!もうすごく驚きましたよ!!!」

僕は両手に持っている氷を廊下に置く。

「じゃあ作戦成功だ。」

「もう、沖田さんったら。」

いつものように微笑む。