「そんなつもりはないんだけどな。」

苦笑いをこぼす。

「総司?辛いことを一人で抱え込んじゃだめだよ?なんのために私が傍にいると思ってるの?」

綺麗な桃色の瞳がこちらを見つめる。

そして言葉を続ける。

「確かにその思い出はつらいものだよね?でも、過去に縛られちゃだめだよ?」

「え?」

「その人は、総司に生きてほしいから助けたんだよ?でも、今の総司を見たらどう思うかな?」

そう言って静かに頬についた血を拭ってくれる。

「大切なのは、悔やむことじゃなくてその人に感謝しながら生きることじゃないかな?」

そう言われたずっと心の隅にあった重いものが軽くなるような気がした。

「ふっ。本当に、蝶はすごいなあ。」

頬に伝わるものが雨の雫なのか涙なのかはわからなかった。

「そんなことないよ?」

そう言ってまた僕を抱きしめる。

「大丈夫。やまない雨はないんだよ?総司が雨が嫌なら私がその雨をよけてあげる。」

「ありがとう・・・。」