醜女と呼ばれた姫








 姉はその藤の君を見て、噂では醜とまで呼ばれている彼女だということを知り、驚いた。


 そして怒りを覚えた。






「姉が言っていたのです。彼女は醜などではなく、そういうふうに言う者の心こそ醜だと。
 その後失礼を承知で、かいま見をしました」






 宏道は黙って聞いている。








「姉の見る目は正しい。彼女は、本当に美しいひとです」

「そう言って頂けると、ありがたい」






 宏道は目を閉じた。



 目の前にいる青年は、藤を愛してくれるだろう。


 そう確信して。