欲張り

 朝。

 雲ひとつない青空を見上げている。

 俺はまだ生きていた。

 昨日の夜に、酒を飲むだけ飲んで死のうと思っていた俺が、まだ生きている。

 今夜、死のうか。だが、その考えにはもう、ためらいがあった。



「唐突な質問ね」

「答えてくれないか」

「死にたいの?」

「俺には、笑えない」

 死にたいと呟いたとき、あの女は笑った。他に言葉はなかった。勝手に死ねばいいという笑い声が部屋に響いた。

「私も。私にも笑えない」

 女は、真っ直ぐに俺をみつめたまま、そう言った。

「ありがとう」

 ポケットの中からお金を出し、女に背を向けた。

「待って」

 女が俺の手を握った。

「抱いて」

 女は一言、呟いた。