欲張り

「死にたい」と言った俺の腕の中で、女は本能のままに生きていた。昨夜、女が見たものは何だったのだろう。

 俺は人間だったのか、それとも亡霊か。

 答えを聞きたい。俺は夜を待ち、女に会った店へ向った。

 ホテル代に金を使ったので、店内には入らなかった。閉店するまで外で待ち続けた。

 その夜は会えず、その次の日も会えなかった。それでも、俺は待った。

 会いたい。久しぶりの感情だった。


 雨の夜。

 雨を避けるため、木の下に入り込んだ。さっきまで、ドラッグストアの店の前で雨宿りをしていたが、店員に不審な目で見られたので、移動した。

 友人が、前の会社に頭を下げてみればいいじゃないかと電話をかけてきた。俺のことを心配してくれているらしい。

 ふと、雨が止んだ。

 しかし、周りは傘をさしているし、水溜りには雨が落ちている。

 傘だ。