『短編』黒縁眼鏡のダイアリー



なのに。

信号待ちしていたわたしは、駅前で1人バスを待つ楢崎くんを見つけてしまった。

学ラン姿ではない普段着の彼に、胸が熱くなった。

卒業式のあと、あの先輩とデートした帰りかな。

ぼんやり眺めていると、まもなくバスがやってきて、彼は吸い込まれるようにバスに乗り込んでいった。



信号が青になっていた。

しばらくしてようやく信号機の音が耳に入ってきた。

わたしは、はっと我に返り、ペダルを漕いだ。