Phantom mask

「哲ー!!」

コンコンとノックしながら哲を呼んだ。
すると…ガチャッとドアが開いて、ガスマスクをつけた哲が出てきた。
いきなり千尋の顔の前に三本指をたてて部屋に引っ込んでしまった。

「三分待てか。」

この三分までに哲は毒物か爆発物をしまい、窓を全開にして換気しているに違いない。
哲は実験オタクでもある。
科学者志望で、今は普通の高校に通っている二年生だ。頭は相当良いらしい。
再びガチャ…と音がして

「いいよー。ごめんね、ちょっと毒の実験を」

そう言って千尋を部屋に招き入れた。
薬品が綺麗に整頓されて並べられている。
哲は部屋の奥に行くと、小さな瓶を取り出してきた。

「これ。千尋に頼まれてたやつ。刃物に塗るんだよね?猛毒だけど鉄には反応しないから熱くならないよ。」

扱いには気をつけてね。と言いながら、哲は瓶を千尋に手渡した。

「ありがとう、哲。」
「お茶でも飲んでく?」
「うん、ちょっとだけ。」

そう言うと、哲はお湯を沸かし始めた。

「先に広の部屋に行ってきたの?」
「うん、短剣のメンテを頼んでてね。」
「広は武器の管理とか機械の開発とか器用なものに向いてるもんね。」
「私ぶきっちょだもん」

たははと千尋は笑う。

「千尋は鶴も折れないもんな~。」

ニヤニヤしながら哲はお茶を持ってきて、千尋の向かい側に座った。

「あ、蓮君とは仲良いんだっけ?」

意外な質問に千尋は驚く。

「とっ………とんでもなっ……いよっ!!!!」
「その様子だと何かあったんだなぁ~?」

哲のニヤニヤは止まらない。

「んー、抱きしめられたか。」
「………っ!!!!!!」
「ほぉ~。」

千尋は隠し事が苦手なため、すぐにバレてしまう。哲には特に。
何でも相談できる人ではあるが。

「なっ、内緒ね。そっ……それにあれは……その………しょうがなかったし……。」
「蓮君、色々背負ってそうだったもんねぇ~。」

哲は全て見通してるのではないかといったような雰囲気があった。
千尋はこれ以上見抜かれるものかと、一気にお茶を飲み干した。

「ごちそうさまっ!!またくるね!!」

急いで会話を切り上げると哲の部屋を出て行った。

「……ふぅん、蓮君キスまでしちゃったのかな(笑)ホントに…わかりやすいんだから。」

(頑張れ…広。)

なんでも見通している哲だった。