「大丈夫。」

ふと棗の声が聞こえ、アタシは顔を上
げる。


     不意打ちキス。


「大丈夫だから。」

そう言って、棗はアタシに激しくも優し
いキスをしてくれた。

カヲルと要はもう周りにいないようだ。

気ぃ使わせたかな・・・。

そんなことを考えてるうちに、棗は自分
の舌をアタシの口の中に突っ込む。

ザラザラした棗の舌の表面が、
自分の舌に重なる。

ゾクッと、背中に筋が入ったようになる。

でも、嫌じゃない。

もっと・・・もっとって思ってしまう。

キスなんていっくらでもできんのに。

いっくらでもしてきたのに。

たかが、ちょびっと血の繋がった男に軽く
キスされただけなのに。

「んあっ・・・なつ・・・めっ・・・。」

アタシの涙ぐむ声を、棗は聴いてるのだろ
うか。

バカみたいにふぬけた声を。

「俺が忘れさせてやっから。。。」

棗は黙って、アタシの肩を抱き、
アタシと二人で屋上を降りた。