ちなみに、今のご時世、ビデオ製造も停止されているんじゃないかと思うくらいDVDが大量生産されている中この店はそれに負けず劣らずビデオが新作コーナーに並んでいたり店内のほとんどはビデオであるというちょっとおかしい風景の原因は紛れもなく、朔川の所業である。

 彼はビデオが好きらしい。テレビよりもDVDよりも。なぜなのかは知らないけれど。

 まあ私は朔川をあまり好きではないので、詳しいことはわからないのだ。なんにしても。

「あ、そうだ夕子ちゃん」絵にすれば吹き出しから電球マークが出ているような若干古臭い動作と声で朔川が私を呼ぶ。「ちょっと前に新しいひと入ったんだよ。美佳子さんっていうんだけど」
「へえ。知らない」初耳だった。
「まあ、最近夕子ちゃんこの店来てなかったしね。確か二週間前あたり……あれ三週間前だっけ? とにかく来たんだけどさ、このひとまた美人なんだ。仕事覚えるのも早いし」
 店長なんだからいつ新人が入ったかくらい憶えておけよと心の中で突っ込んで、質問する。