「ただ、難聴遺伝子を持っているから、


耳の聞こえない子が生まれやすいって言ってた。



でも私、


だったら


だからこそ、


拓人を支えてあげたいと思った。



お父さんには、心配かけるかもしれないけど私・・・



拓人となら、どんなことがあっても、


私、

頑張れると思うんだ」




お父さんは「そうか」と笑った。






「花音。




劣性遺伝なら、両親共に難聴遺伝子を持っていないと、


問題は起きないんだ。



つまり、花音が持っていなければ、


一般の出産と確率は同じだ。




それを花音にも説明すればいいのに。



拓人くんのことだ、

もし、耳の聞こえない子が生まれた時、

自分だけの責任にしておきたかったんだろう。





天文台で俺に殴られても、



何も言わなかった。


言い訳ひとつもしないで、


ずっと謝っていたよ。




花音の幸せを願って。






そう思うと、





拓人くんは、ずっと



俺との約束を守っていたんだ。







自分のことよりも、



一番に花音のことを思っている。





ずっと、花音を大切に思っていたんだな」