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それは、今から少し昔の話――


心を閉ざした若者は、屋敷の使用人を全て追い払って、たった独りで暮らしていました。


広い屋敷を管理するのは、心を持たない無機質なロボット達でした。



ある冬の夜。


窓の外で花が咲いているのに気付いた若者は、不思議に思いました。


『昨晩から雪が降っているのに、花の上に積もっていないとは、一体どういう事だろう』


窓を開けてみると、そこには傘を持ったロボットが、一体だけで花を降り積もる雪から守っていたのです。


そうして、心を持たないはずのロボットは言いました。


『ご主人様、花が寒そうです。可哀想です。どうか、屋敷の中に入れてあげてはいただけないでしょうか?』


初めは冷たく拒否をした若者でしたが、悲しそうに泣いているロボットを見て、渋々中に入れてあげる事にしました。


それからというもの、ロボットは毎日のように若者の部屋を出入りするようになったのです。


命令されたわけでもなく、頼まれたわけでもなく。


花瓶に生けられた花の世話をしては、嬉しそうに微笑んでいました。


ロボットは、その花が好きだったのです。


『心が無いはずのロボットが、花を愛でるか』


若者もまた、そんなロボットに興味が湧いてきました。