「別れよう」

由香にこの言葉を言うのは辛かった。
手を繋ごうとしていた由香を突き放すのが辛かった。

「何で?…好きだよ。私は、圭吾のこと好きだよ?!」

そう言った由香の目からは、数粒の涙が流れていた。


「由香の好きは、多分…違うんだよ。

由香は、今でも心の中にアイツがいるだろ。

忘れなくていいって言ったの…俺なのにね。ごめんな?

中途半端なこと言って…付き合い方して…。

好きって言ってくれありがとう。」


泣きそうになるのをぐっと堪えて…
由香が立ち去るのを待った。


「もう私の心には、圭吾しかいないよ。」


嬉しかった。
きっと、そうなのかも知れないね。

「でも、昨日…。
由香は、ちょっとでも俺じゃなく橘を考えたろ?」

「…圭吾?」

由香は、何で知ってるの?て直ぐにでも聞きそうな顔をしていた。

「あん時一時間くらい待ったんだからな?
全然来ねえしさみぃし…

んで…教室に行った。

そしたら、由香が抱きしめらてるとこを見た。」


こんなこと言いたくなかった。
由香を傷つけたくなかった。


「だから…


別れよう」



私、知らないうちに圭吾を傷つけてたんだね。

そう言って…俺に背を向けて歩き出した。