私は噂で聞く普通の魔道士とは少し違うみたいで。
大体の魔道士は使える魔法が決まっているんだけど、
私は防御、攻撃、回復、の三つの魔法が使える。
そのことが広まったらいろんなところから要請が来ちゃって、
普通に暮らしていけなくなるからそのことは隠してるんだけど。
「防御魔法かけてるってバレちゃうかなー…」
さっきの声の人が魔道士だったら結界が見えてしまって、
私が今自分を守る魔法をかけてる事がバレてしまう。
そのまま軍とかに誘われてずるずるー…って事だけは避けたい。
まあ、魔道士なんてそうそういないし、大丈夫かなぁ。
丘に来るのには森を通らなくちゃいけなくて、
この森を抜けるのが結構大変だったりする。
透けるような綺麗な蒼の草は実は毒があって、
触ったら手が痺れちゃって、魔物が来たら大変だったり。
この森でそうやって亡くなった人が結構いるって話を昔に聞いた。
「っ、!おいっ、ちょ、落ちつけよ!な?」
少し息を切らせながら走っていると、さっきの声が聞こえた。
あの嫌な魔物の声も一緒に。
蒼い草を切り落としながら私はその声のもとに走った。
たぶん、この大木の向こう。
剣を握り直して、視界の邪魔をしている蔦を一気に切り裂いた。