「さあ、明後日から大会だ。レギュラー陣は体調崩すなよ。」
監督の声が響く。
「くちゅん!!」
小さなくしゃみの音。
部員全員が、監督までもが声の無視を見入る。
「島井、大丈夫かぁ?」
監督の素っ頓狂な声。
「大丈夫びぇす!」
再びくしゃみ。
「風邪でも引いたか?」
椎名先輩が聞く。そしてこちらを見る。…何?
「あー、とりあえず今日は休んどけ。帰っていいぞ。」
「いえ、まだ仕事が…」
「そんなの一年にやらせるから。島井は帰りな。ほら、洒冴。送っていけ。」
椎名先輩が振ってきた。
「えぇ!?」
「だってかの…」
「行きます!!」
「そうか、頼んだぞ。島井、早く治すんだぞ。」
「はい…。」
部員全員と監督の妙な視線を受けながら、今日は部活なしで帰れた。


「はっくちゅ!!」
「…大丈夫か?」
「ふっ…死にはしないさ…くちゅん!!」
何カッコつけてるんだ?
「…お前でも…風邪、引くんだな。」
「引かないとでも思ってたの?私を何だと…ちゅん!!くちゅん!!思ってるのかしら?」
つい思ったことが口に出てしまった。
「あー、ホラ?バカは風邪ひかないって…」
「私をバカだと思っていたの?」
「あっ!?違う違う!!」
「へぇー、ちゅん!!はっくちゅん!!」
ヤッベーー!!好感度下がった?
「あ、もうここでいいよ。ありがと。今日は久しぶりの休みなんだからしっかり休みなさいよっちゅん!!」
「あ?あぁ、そっちこそしっかり休めよ。」
「うん。バイバイ。」
そういえば、島井も休み無くマネージャーの仕事してきてたんだな。
ずっと一緒の時間に帰ってたんだ。
僕の練習と同じ時間働いていた。
大変だな。
「ねぇ…。」
「なんだ?」
「あとでメールか…電話してもいい…かな?」
「…っ!?…べっ、別に、いいぞぉ?」
いきなりすぎて変な声になっちゃったじゃあないか!!
でも反射神経は良かった。
『かな?』のあとの返事にかかるまで0.2秒。
神速のインパルス!!


家に帰り着くと、ベッドの上でケータイをすぐ手が届くところに置いて…
「久しぶりにゲームでも…」
ヴゥゥゥゥゥン!!
「キタッ!?」
メールだ!!
画面をこれまでに無い速度で開く。
件名『無題』本文『島井と2人きりになって気分はどうだ?』
差出人…椎名先輩かよっ!!
「とりあえずスルーしておこう。」
画面を閉じ、PSPに持ち替える。
「やっはろーー!!」
THE・妹登場♪
「今日は早いねー。」
「部活が無くなったんだよ。」
「そうかー。じゃあ一緒にゲームしよー?」
「断る。」