サクのことは、キライじゃない。
むしろ、“あの時”助けてくれたことに感謝している。
でも、ああやって年下の子を見てしまうと、こんな生活やめなきゃいけないって、本気で考えてしまう。
心が、無理をしていること。
まだ、マサキのことを忘れていないんだって、痛感した。
高校時代、私は全身で恋をした。
他人(ひと)から「若さによる勢い」だって言われたら、否定はできない。
でも、あれは唯一の恋で、私のすべてだった。
マサキ。いま、何をしてる……?
私の前からいなくなって、どこへ行ってしまったの……?
サクは私の考えを読んだみたいに、
「おい、大丈夫か?
俺とバイバイするのさみしい?」
と、わざと的外れなことを言ってきた。
いけないいけない。ひとりの世界に入ってた。
「全然。今日の夜は、近所の人に焼肉連れてってもらうから楽しみ」
「あっ、そ」
彼氏でもないクセに、サクは無意味にふてくされた。


