ケータイを両手で操作しつつ、アサミは隙なくしゃべり続けた。
「この小説が書籍化されたってのは、すでに昨日から知ってたけど、たしかにこれはスゴイよ。
ヒロが自慢したくなるのも分かる。
親友がサイトの読者に支持されて本まで出すことになったら、知り合いとかにポロッとしゃべりたくもなるよ。
本屋で働くくらい本好きなヒロなら、よけいそうなるよね」
「でも、マサキは、ケータイ小説書いてること、私達に知られたくないみたいだったね……。
だから、昨日、アサミにも読ませないようにしたんじゃない?
あれこれ理由つけてケータイ小説をバカにしたのだって、自分の作品が書籍化してるって知られないための、ウソだったんだと思う。
マサキは本気でああいう嫌なこと言う人じゃないし」
間違いなく、私はマサキのケータイ小説をブックマークした。
なのに、どういうわけか、読もうとした時、それはこつぜんと消えていた。


