小説の中身が、私とマサキの恋愛体験記であるということ。
そう気付くまで読み進めたら、いつの間にか東の空には朝日が昇っていた。
エアコンの風を寒く感じたので、温度設定を高くし、カーテンを開く。
窓の外。
新しい朝がやってくる。
私も、新しい一歩を踏み出せた気がした。
いま、マサキに会いたい――。
けれど、彼に連絡する手段がない……。
大学中退と同時に、マサキはそれまで使っていたケータイを解約してしまった。
今頃マサキは、私の知らないケータイと番号を携帯して生活しているのだろう……。
唯一、マサキの連絡先を知っているのはヒロだけなのに、私はヒロの番号すら知らない。
マサキと別れた時、マサキとの想い出を遠ざけるかのごとく、ヒロの番号も消してしまったから。
マサキの書いたケータイ小説を読んだところで、現実は何も変わらないのかな……。
気持ちがノッているのに行動に移せずモンモンとしていると、早朝だというのに、インターホンが鳴る。
こんな時間に遠慮なくウチの玄関前に立てるのは、他でもない。
幼なじみのアサミだけだ。


