ケータイ小説 『肌』 著:マサキ


私は、Mとまったく同じ体験をした覚えがある。

こんなことって、あるのだろうか?


もちろん、世の中には似たような話が飛び交い、混じっているのは分かる。


電柱にぶつかって目から星を出す主人公。

歩いていたら、空を飛んでいる鳥のフンが頭に落ちるという不運な目にあう通行人。

友達と同じ人に恋をする未成年の女子。

そういった偶然は、日本の小説やマンガにはいくらでもあると思う。


でもこれは、そんな「よくある」レベルの似通いじゃない。

クシャミのツバに関するエピソードもそうだし、私と同じように「味噌温めたらしょう油」と思い込む女が、日本国内で他にいるとは思えない。


《Mの手料理。

俺は冷や汗をにぎり、炭と化した卵焼きを口にした。

「苦い……!

せっかく作ってくれたのに悪いけど、二口目いくのは無理……!」

素直な感想を告げると、彼女は泣き出してしまった。


以前、教師の都合で2時間分自習になったので、クラスのみんなでLL教室を借り、感動物の戦争映画のDVDを見たことがあった。

主人公の家族や恋人が戦死してしまうという、つらい内容だった。

女子だけでなく、男子までもが涙する中、Mだけは泣かずに強い瞳で映像を見ていた。

それなのに、こんなことで泣くなんて……。


俺は、初めて見たMの涙にひどくうろたえ、罪悪感を覚えた。》