「大丈夫!
マサキは心配しすぎ。
私だって、もうオトナの女なんだからねっ」
動揺を悟られないように、私はケラケラ笑って冗談で返した。
「……明らかに飲み過ぎだろ。
気付いてないだろうけど、さっきから足元フラフラしてるし。
居酒屋のカウンター席で、一人飲み過ぎて若い女性店員に絡んでるオッサンみたいだ。
ウケ狙いでやってんの?
だったら、頭にネクタイ巻いた方が笑いは取れるんじゃない?
その後恥ずかしさを通り越して、気まずくなるだろうけど」
意地悪な笑みを浮かべ、マサキは私の顔を覗き込んだ。
私は顔をそむけ、
「ネクタイなんて、どこにもないし」
「わかってんじゃん。
だったら、おとなしくコレ飲んどけ」
別れた時の、どうしようもない胸の痛み。
マサキと別れた後から半年間、寝る前、涙が止まらなかった。
夜が来るのが、どれだけこわかったか……。
今ではなんとか我慢できているそんな気持ちも、マサキの一言一言が、いとも簡単に呼び覚ます。
……いまさら優しくしないでほしい。
私は私で、精一杯やってるんだから。
一足先に社会人になって気持ちに余裕ができたかどうだか知らないけど、もうマサキは、私の恋人じゃないんだから。
ウーロン茶を持つ手が震え、息がつまる。


