やっぱりアサミは、変わらない。
予告なく、そして意図なく、いつでも私をヒヤヒヤさせてくれる。
「もう……。驚かさないで」
私がジトッとした目でアサミを見ていると、
「アサミ、いまの彼氏で何人目だよー」
ウーロン茶入りの細長いグラス片手に、マサキが話に割って入った。
「悪かったな!
どうせいつも長続きしないよ、あたしの恋は!」
酔っているのかいないのか、アサミは悔しげな顔でビールをあおる。
ヒロと笑い合いつつ、そんなアサミを見ていると、
「飲みすぎ。もうやめとけ」
横からマサキに、ウーロン茶を渡された。
つい、反射的にグラスを受け取ってしまう。
ひんやりした感触を手のひらに感じると同時に、マサキの匂いがした。
その人独特の、肌の匂い。
何年経っても覚えてる、愛おしい匂い。
……ダメだ。何も感じるな……!
鼻の息を止め、私は言った。
「平気、このくらいは。
お酒なんて久しぶりだし」
「久しぶりなら、よけいやばいだろ?
さっきからガブガブ飲み過ぎ。
飲み慣れたヤツより、普段飲まないヤツの方が、急性アルコール中毒になりやすいんだからな」
マサキはささやき、私の肩に手をやった。
……なつかしい。
胸の広さや腕の感触も、あの頃と変わってない。
私の頭が、マサキの胸に触れた。
一瞬にして涙が出そうになる。
それまで、どれだけお酒を飲んでも全然何ともなかったのに、急にサウナに放り出されたみたいに、全身がカッと熱くなった。


