ケータイ小説 『肌』 著:マサキ


マサキってこんな人だったっけ?

付き合ってた頃、マサキはそんな風に他人をバカにするようなことは一切言わなかった。

ケータイ小説から映画化された恋愛物語を一緒に見に行った時も、私に負けないくらい感動して泣いてた。

マサキだって、かつてはケータイ小説の魅力に惹かれていたうちのひとりだ。


いまのマサキの言葉、本気で言ったものとは思えない。


「いま、仕事でいろいろあってイライラしてたんだよな。

アサミも、許してやってよ」

ヒロがマサキのことをフォローした。

「今度の転勤話で、一部の先輩から毎日イヤミ言われたりするもんな。

マサキは仕事できる方だから、妬まれてんだよ」

「ああ……。ごめん、イライラしてた。

ヒロは褒め過ぎだけど。

嫌なこと言って悪かったな、アサミ」

「まあ、あたしも言い過ぎたかも。ごめん」

意外とすんなり謝ったマサキに、アサミは毒気を抜かれてしまったようだ。