ケータイ小説 『肌』 著:マサキ


ムキになるアサミに、マサキはひょうひょうと言い放った。

「ケータイ小説なんかが流行るから、日本人は年々バカになるんだよ。

ゆとり教育とか言って、昔に比べ、学校での勉強量が減ってるっていうのに」

「あたし達だってゆとり世代ど真ん中じゃん」

アサミの反撃をかわし、マサキは言葉を継いだ。

「文学に触れて感動したいなら、ちょっとはまともな小説読め。

ケータイ小説読んでるなんて、俺だったら恥ずかしくて人に言えないな。

お前も、来年から一応社会人になんだろ?

そんなまま会社に行ったら、職場の先輩にバカにされるぞ」

「うわっ! ムカつく!

何その言い方!!」

アサミは負けじと言い返した。

「小説はね、技術うんぬんじゃない!

マサキの言う文学的な小説がどんなに良いかは知らないし、たしかにケータイ小説をバカにする人もいるけど、あたしは、ケータイ小説を書いてる人ってすごいと思う!

マサキには分からないだろうけどさ。

書きたい、表現したい、読みたいって気持ちが大事なんだよ!?

ケータイ小説愛読してる人と、書いてる人に謝れ!」

アサミは怒り心頭といった様子だが、本気でキレてるというより、マサキの言動に違和感を覚えてためらった結果、こういう態度に出るしかなかったんだと思う。

私も、マサキの発言には引っかかるものがあった。