たったひとりで待機するのは、ヒマ過ぎる。
今後、何の役にも立たないと分かってはいても、無意識のうちに人間観察してしまう。
仕事帰りのOL。
家庭と仕事を両立してそうな女性。
部活帰りらしき男子高生。
放課後に補習でもあったのか、制服姿の女子高生の姿も時折目に入る。
最近私は、高校生のコに目がいってしまう。
ビルの壁から伸びるカフェのシックな旗や、都会的な雰囲気によく合う街路樹の緑。
視界に入るものはたくさんあるのに、私はやっぱり、通りすがりの高校生達に過去の自分を重ねてしまう。
外で待っていると、店内からは調理中の料理のにおいが風に乗って鼻孔(びこう)をついた。
普段、いい加減な食生活を送っている私には、たまらない。
これは、ピザの香り?
においからして、チーズの濃厚リッチ感が伝わってくるではないか!
ああ、早く食べたい……。
人に聞かれたら笑われてしまいそうな私の欲求を、目の前の歩道を通りすぎる女子高生の大きな声が遮断した。
「マサキさんの小説、読んだ?
めっちゃ感動するよ」
「マジでー!?
URL送ってー」
「ちょっと待って、いま送る。
……よし! 送った」
「来た来た!」
ケータイ片手に寄りそい合う、テンションの高い女子二人組。
高校時代の私とアサミの帰宅途中の姿とかぶった。
なつかしさに胸がしめつけられる。
それと同時に気になったのは、彼女達の「マサキの小説」というセリフ。


