ケータイ小説 『肌』 著:マサキ


きつく抱きしめ合った後、照れくさい気持ちで、互いの目を見た。

再会した時に漂っていたマサキのとげとげしさが、今はない。

「同窓会の日、アサミに言ったこと、俺が職場の先輩に言われたことなんだ」

「ゆとり教育とか、ケータイ小説見るとバカになるとか、そういうの?」

「……うん。アサミのケータイ中断させたのは、本当に読まれたくなかったから。

でも、あれは自分で言い過ぎたと思うし、今でも後悔してる。

入社したばっかの頃、右も左も分からなくて、世間話することもままならなくて。

とりあえず、自分の趣味の話でもしようと思って、先輩と昼飯食べに出た時に、ミオと見に行った映画の話をしたんだ。

ケータイ小説でも話題になってたし。

そしたら、『平成生まれは痛いヤツが多いな』とか『出たよ、ゆとり』なんて、バカにされてさ。

めちゃくちゃ腹立ったけど、最近ではそれを受け流すのも慣れて。

なーんて、余裕ぶってるフリして、知らないうちにうっぷんがたまってた」

「でも、マサキってそういう八つ当たりしない人じゃなかった?」

「そんなことない。

アサミにぶつけたのが、何よりの証拠……。

ミオがいなくなってから、俺は年々、弱くなってる。

俺も、自分があんな嫌なこと言う人間だなんて知らなかった。

ミオと離れる前までは……」