『オレからの餞別(せんべつ)』
サクはそう言い、今まで割り勘していたホテル代を全額払ってくれた。
一緒に部屋を出るのは気が引けて、私から先に外に出た。
サクの顔を見ることは、もう、ない……。
雨はやんでいた。
ぬかるんだ道が、私に、正しい方向に進めと教えてくれているようだった。
何があっても、迷わない。
マサキとの未来を選ぶ。
だって、私は、マサキのことが大好きなのだから。
地下鉄のホームで、電車を待ちつつケータイを見た。
サクの電話番号を消そうと思ったのだけど、それをやめた。
新着メールが5件もきている。
全部、アサミからだった。
《ヤマとは、どこで会うの?》
《あたしも行くから、場所教えて!》
《電話出てー!!
とにかく、ヤマには会ったらだめ!!》
《ヤマって、ちょっと前からマルチに関わってるらしいよ!
アイツと仲良かった周りの人が、被害にあってる。
ミオも、もう関わらない方がいいよ!》
《ミオ、大丈夫!?
マサキにも助け求めてみるから、ヤマなんかの言いなりになったらダメだよ!》
受信時間を見ると、全部、私がヤマと会う少し前に送られてきたメールだった。


